【感想・ネタバレ】きみがすべてを忘れる前に 作:喜多南

相手を想うあまりついてきた「嘘」とは。ー

結城クロは、ある日の放課後の教室で、同級生だった長谷川紫音の幽霊を出会う。

紫音を成仏させるため、彼女の心残りを聞き出そうとするクロ。

しかし紫音はまるで取り合わず、生きていた頃と同じようにクロを振り回していくが、やがて紫音の記憶と存在が薄れ始めて・・・。

霊感体質の少年と、幽霊少女が繰り広げるせつない青春ラブストーリー。

物語の最後に明かされる、相手を想うあまりついてきた「嘘」とはー。

以下、ネタバレ含みます。

 

「きみがすべてを忘れる前に」のストーリー(ネタバレ含)

■プロローグ

本作の主人公、霊感体質の少年・クロは放課後の教室で時間を過ごしていた。

霊感体質のクロは放課後に幽霊が現れることを予感していた。

予感は的中し、クロの前に一人の少女の幽霊が現れる。

幽霊は本作のヒロイン・長谷川紫音だった。

クロと紫音は顔見知りのようで、幽霊を前にしてもクロは取り乱すことは無かった。

クロは紫音に「キミは幽霊であること」「心残りを探そうと」と告げる。

紫音は自分が幽霊であることを認めながらも心残りを探すことを拒否する。

そして、紫音はクロに「私を生き返らせなさい」と命令する。

■第1話 届かない思いは、闇の中に

明くる日、クロは登校すると紫音がいた。

紫音に話しかけられ挨拶をしていると、向こうから同級生の士郎がやってきた。

クロと士郎と紫音は3人でいつも過ごしていた。

士郎に見えない、声もかけられない紫音はショックを受けている様子。

その様子をみて気まずいクロ。

※士郎に連れられる道中、焼却炉で這いつくばって何かを探し続ける地縛霊を見つける。

3人はいつも一緒に過ごしていた。

その象徴的な場所は大きな木の木陰だった。

士郎はクロ(と幽霊の紫音)にその木が切り落とされるかもしれないと話す。

話が終わって、教室に向かうクロ。

クラスの担任は結城藍子。

クロの姉らしいが、クロは藍子に複雑な感情を抱いている。

教室と廊下で藍子と話していると、科学教師の松本が横切った。

彼は何か良くないものに憑かれているようだった。

昼休み、弁当を食べようとしているところに二人の少女が現れる。

姉の結城緋色、妹の結城黄だった。

緋色に脅迫されるように屋上に連れて行かれるクロ(と紫音)。

屋上に行くと、緋色はクロと紫音にどういう事態なのか問いただす。

クロの家族はみんな霊感体質で、紫音も見える。

紫音がクロに悪い影響を与えるのではと危惧したらしい。

クロが緋色に説明するとなんとか納得してくれたらしく足早に去ってしまう。

残った妹の黄と昼ごはんを食べるクロ。

風の強い屋上で、朝に見つけた地縛霊の事を考えていると、妹に抱きつかれる。

みるみるうちに顔が青くなっていくクロ。

女性に触れられない体質らしい。

クロは意識を失ってしまう。

目が覚めると、昼休みは終わっていて午後の授業時間になっていた。

クロは授業はほっておいて、焼却炉の幽霊がかつて自分の学校の生徒で屋上から転落死したことを意識を失う前に黄から聞いていたので探すことにした。

図書室で紫音と協力しながら、過去のアルバムを片っ端から調べていると少女の事を見つける事が出来た。

それと同時に見覚えのある名前にも行き着いて、クロはおおよその事情を把握することが出来た。

放課後、クロ(と紫音)は化学準備室を尋ねる。

科学教師の松本先生に会うためだった。

焼却炉の少女(幽霊)と松本は同級生だった。

クロは松本のポケットに黒い影を感じていた。

「ポケットの中に何を入れているんですか?」

狼狽する松本。やはり松本は焼却炉の少女の事を知っていた。

クロは追求するがポケットの中の事は頑なに話そうとしなかった。

黄昏時が近づいてきたクロは焼却炉に走り出す。

クロは黄昏時だけ、霊体に触れる能力を持っていた。

焼却炉の少女を強引に立ち上がらせ、松本のところに連れて行く。

松本に少女の姿は見えないが、松本は堰を切ったように話し始めた。

過去の真相が明かされる。

少女は松本の事が好きだった。

屋上に呼び出してラブレターを渡そうとしたのだ。

その日は風が強かった。

ラブレターは風にさらわれてしまう。

ラブレターを追った少女は誤って転落してしまう。

松本は見ていることしか出来なかった。

少女はラブレターが他人に見られたら松本に迷惑がかかると思い、地縛霊になっても探し続けていた。

松本がポケットに入れていたのは、風化した少女のラブレターだった。

泣き崩れる松本。

風化したラブレターを見た少女は成仏する事が出来た。

焼却炉の幽霊の件が終わったクロは改めて紫音の心残りを聞こうとする。

そこにまたまた士郎が現れる。

一緒に昇降口まで行く最中に士郎と紫音の出会いの話を聞く。

士郎とクロの約束も明かされ、それを聞いた紫音は。。。

~これまでの設定、状況のまとめ~

・クロと紫音と士郎は同級生で友達同士。士郎と紫音は小さいことからの幼馴染だった。

・クロは霊感体質。さらに女性に触れられないが黄昏時だけ霊体に触れることが出来る。

・クロには3人姉妹がいて、姉・藍子、姉・緋色、妹・黄

・紫音の心残りはわからないまま

■第2話 奏でるは、黄金の旋律

クロは朝食を妹の黄と一緒に食べていた。

紫音ての関係を黄に追求されるがありがちな話で適当にごまかした。

登校し紫音が現れる。

なぜか、ハイテンションな紫音。

適当にいなしつつ教室に到着し、教室に入ろうとしたその時クロは何かに躓いて盛大に転んで鼻血まで出してしまう。

紫音がクロに足を引っ掛けたからだ。

昨夜、紫音は音楽室で幽霊にであって現世に介入する方法を教わっていたそうだ。

保健室でクロは紫音にビンタまでされた。

音楽室の幽霊を「ピアノの君」と名付けた紫音。

クロに「ピアノの君」を会わせたいからと音楽室に向かう2人。

音楽室には確かに少年の幽霊がいた。

彼の心残りは「一緒に音楽を奏でること」だった。

紫音にせがまれ渋々相談に乗るクロだったが、自分ではどうにも出来ないと言う。

しかし直後、妹の黄ならなんとか出来るかもと紫音とピアノの君に言うが、あまり乗り気ではなかった。

それでも、喜ぶ紫音とピアノの君。

クロは妹に対して申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

放課後、バスケ部である黄に会うため体育館に来ていたクロと紫音。

黄に協力を頼むが、あっけなく断られてしまう。

それでも、諦めず頭を下げる紫音。

そこまですることに驚くクロ。

そんな紫音に黄はゲームを提案する。

「ボールを1回でもゴールに入れることが出来たら協力する」

そのゲームを紫音は受ける。

しかし、霊体で物質に触れられる時間は1秒くらしかないうえ、非常に消耗する。

クロがいくら言っても諦めない紫音。

病気で色々な事を諦めて生きていた、だから死んでしまった今からは何も諦めたくはなかった。

どうしてそこまでピアノの君の為に頑張るんだとクロがが聞くと。

クロに一瞬でも触れられる方法を教えてくれたからだと紫音は答える。

胸が締め付けられるクロ。

紫音は消耗の限界で倒れてしまう。

時間は黄昏時で、倒れる紫音にクロは触れることが出来た。

諦めない紫音を黄はずっと見ていた。

根負けしたように紫音に協力してくれる黄。

音楽室に向かう途中、紫音への思いを黄に話すクロ。

幽霊になった今でも紫音が好きであること。

紫音には自分の気持ちを伝えていること。

黄の能力は霊体に体を貸すことが出来る能力だった。

オーケストラ部、通称「オケ部」に協力してもらってピアノの君は音楽を奏でることが出来、無事に成仏する。

変わりに黄の悲しい過去が明らかになる。

「彼女」の両親は事故で亡くなっているとクロ。

幽霊が見える彼らは自分たちの親の幽霊も当然見える。

黄は両親に成仏して欲しくなかった。

それでも、目の前で2回目のお別れを体験することになった悲しい過去が黄にはあった。

紫音は黄に対して罪悪感を感じた。

最終的に頼んだのは自分だとクロは紫音を慰める。

クロと黄は何もなかったように仲良く家に帰っていった。

~これまでの設定、状況のまとめ~

・妹・黄の能力は霊体に体を貸すこと

・クロは紫音の生前、紫音への思いを伝えている。

・クロは幽霊になった今でも紫音の事を好きでいる

・クロは黄の両親が死んだことを話す時、「彼女」の両親と言った。

■第3話 夕暮れの逢瀬

紫音はまた夜の学校を闊歩していた。

今度の幽霊は生徒指導室の幽霊。

不思議なことに幽霊である紫音でも生徒指導室には入ることができなかった。

「入るな、覗くな」

と幽霊の声が聞こえた。

次の日、クロを待っていた紫音だが姿を表したのは姉の緋色だった。

緋色にクロについて話があるからと体育館裏に連れて行かれる紫音。

クロの事をどう思っているのか聞かれる紫音。

そんな話をしていたはずが、いつの間にか緋色は紫音に生徒指導室の幽霊を救う協力をするはめになっていた。

昼休み、いつも朝会っていた紫音がいなくてソワソワしていたクロ。

弁当もなく、お金もなく、50円の牛乳パックだけを昼ごはんにしていたクロのもとに紫音がようやく姿をあらわす。

紫音はクロに自分に告白したのかと尋ねる。

牛乳を吹き出すクロ。

そこに微妙な助け舟を出してくれる姉の藍子。

間に入られてやや不機嫌な紫音はクロにデートをしようと言い出す。

生徒指導室で待ち合わせと言って去っていく。

緋色は紫音に協力して生徒指導室の噂について収集していたが、生徒指導室の扉を開ける合図は紫音が盗み聴きしてGETしてしまった。

徒労感と紫音の不思議な強制力に呆れる緋色だった。

二人は例の生徒指導室の前に来た。

噂のとおりに扉をノックすると紫音だけは生徒指導室に入ることが出来た。

生徒指導室には1人しか入れないようになっていた。

そこにクロも合流する。

生徒指導室の中に入った紫音。

そこは普通の物置だったが、突然黒い影が現れる。

それは1人の少女の怨霊だった。

ことの顛末はこうだ。

・かつて、生徒指導室では恋愛関係にあった女教師と男子生徒が逢瀬を重ねていた。

・その事実を密告したのが怨霊となった女子生徒。

・密告された後、女教師は退職し現在は結婚している。男子生徒も退学後、就職している。

・ならば、女子生徒はなぜ怨霊になっているのか?

・生徒指導室は始め、女教師と女子生徒の秘密の場所だった。

・扉を開ける合図は、ノックの回数とリズム。

・合図を作ったのは女子生徒

・しかし、密告した事を後悔する女子生徒は自らを許せず怨霊と化した。

女子生徒の怨霊と対峙する紫音。

女子生徒に決して優しい言葉はかけなかった。

紫音の言葉に同様する隙に扉を開ける事が出来た緋色とクロ。

緋色が怨霊に触れると怨霊は瞬く間に消えていった。

緋色は黄昏時だけ幽霊を強制的に浄化することが出来るお祓い能力をもっていた。

危ない所を緋色に助けてもらって感謝する紫音。

クロを見て、デートの続きをしよと言う。

二人は屋上に来ていた。

クロは紫音に夏休み前の放課後に告白をした、そして振られたと話す。

その事を覚えていない紫音。

自分の記憶が欠けていること、霊体が徐々に薄くなっていることを感じる紫音だった。

~これまでの設定、状況のまとめ~

・姉・緋色の能力はお祓い能力。

・紫音にはクロから告白された記憶が無い。他にも色々な記憶を失っている。

■第4話 空の下で駆け回ることを

クロは焦っていた。

今日も朝、紫音を見かけなかったからだ。

クロは思い出の桜の木に向かってみると、そこには少年の幽霊がいた。

何もかもを忘れた少年に心残りを教えてあげるからここで夕方まで待っていてとお願いするクロ。

姉の藍子なら心残りが分かるらしい。

クロと少年が何か話す所を隠れてみていた紫音。

クロがいなくなった後、少年に近づきクロとの会話を教えてもらう。

紫音は自分がドンドン大事な何かを亡くしていく事に不安を感じていた。

これ以上、大事な何かを忘れる前に成仏したとまで思い始めていた。

心残りを教えてくれる藍子に会うため、紫音は少年を連れて職員室に向かった。

が、夕方にならないと結局何も分からないという事で紫音と少年は桜の木に戻っていった。

クロは嫌な予感を覚えていた。

結局、1日紫音の姿を見ていなかったからだ。

仕方なかく少年との約束を果たすため、クロは職員室の藍子の元に向かう。

しかし、藍子はいなかった。

松本先生に聞くと、藍子は緋色と黄にどこかに連れて行かれたらしい。

藍子の事は諦めて、とりあえず少年の待つ桜の木の元へクロは向かった。

一方、藍子は緋色と黄に視聴覚室に連れて行かれていた。

緋色は何か感づいたらしく、藍子に紫音の事を問い詰める。

どうやら、紫音の事に関しては藍子はかなり重要な関わりがあるようだった。

その事は後で説明するからと言い、藍子は妹二人になるべくたくさん「紐」を集めるようにお願いする。

桜の木の元にやってきたクロ。

そこには少年と、紫音の姿があった。

なぜ、心残りを知る方法があるのに、直接自分から聞き出そうとするのか問い詰める紫音。

厳しく詰問する言葉に少年は激しく動揺する。

手の施しようが無くなった時、藍子が現れる。

藍子は少年にたくさんの紐を見せて、どれが自分を苦しめているか尋ねた。

今回の幽霊のエピソードの顛末は・・・

・少年は浮遊霊で自由度が高い

・浮遊霊は多くの記憶を失っている

・微かに残っていた記憶が「紐を結んではいけなかった」という事だった

・少年を苦しめているのは「リード」だった

・少年は老犬を飼っていた

・しかし、引っ越しの際に両親に老犬で長生きしないから捨ててこいと言われてしまう

・少年は公園の木にリードを結んで逃げるように走り去る

・そして、少年は交通事故で亡くなってしまう

藍子の能力は降霊術で、心残りにしているものを霊体で呼び寄せる事ができた。

少年はかつて飼っていた犬に誤りたかった。

それが叶って少年は老犬とともに成仏していった。

少年が消え去って、残された紫音と結城家の一同。

クロは藍子に頼んで紫音を降霊して貰ったのだと告白する。

なぜ、そんな事をしたのか。

それを語ろうとするところに士郎が現れる。

士郎によって、桜の木がなぜ3人の居場所になったか語られた。

その話をを聞いてもその事を覚えていない紫音は駆け出してしまう。

士郎に話があるから待っていろと言って紫音の後を追うクロ。

待たされる士郎は過去を回想する。

紫音の手術の日、急いで病院に向かっていた事。

その彼に近づく大きな車体。

~これまでの設定、状況のまとめ~

・姉・藍子の能力は降霊術。紫音は藍子の降霊術で存在していた。

・クロは誰のために、何のために紫音を降霊させたのか?

■最終話 霧が晴れた時

全ての事実が明らかになります。

誰のために?

何のために?

誰が生きて?

誰が死んで?

どれだけの「嘘」があるのか。

これはひどすぎるネタバレになるので自重しますm(__)m

■エピローグ

とある場所に向かうクロ。

そして、彼女との再会の予感を感じていた。

 

「きみがすべてを忘れる前に」を読みを終えた感想

各話で、結城家の能力を紹介するように展開される幽霊のエピソード。

幽霊とのエピソードが紫音に毎回何かしらきちんと影響を与えていく。

ラストの美しい伏線回収は素晴らしかったと思います。

この作品は以前、「僕と姉妹と幽霊の約束」という名前で宝島社の「このライトノベルがすごい!」で出版されていたそうです。

こちらは続編があるみたいです。

全面改稿された本作は単体で終わるような印象でした。

読んだ跡の余韻が素晴らしい一冊でした。

オススメです!

それでは失礼しますm(__)m

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