【感想・ネタバレ】四月になれば彼女は 作:川村元気

胸をえぐられる、切なさが溢れ出すー

4月、はじめて付き合った彼女から手紙が届いた。

そのとき僕は結婚を決めていた。

愛しているのかわからない人と。

天空の鏡・ウユニ塩湖で書かれたそれには、恋の瑞々しいはじまりとともに、二人が付き合っていた頃の記憶が綴られていた。

ある事件をきっかけに別れてしまった彼女は、なぜ今になって手紙を書いたのか。

時を同じくして、1年後に結婚を控えている婚約者、彼女の妹、職場の同僚の恋模様にも、劇的な変化がおとずれる。

愛している、愛されている。

そのことを確認したいと切実に願う。

けれどなぜ、恋も愛も、やがては過ぎ去ってしまうのか。

失った恋に翻弄される、12ヶ月がはじまる。

以下、ネタバレ含みます。

 

「四月になれば彼女は」のストーリー(ネタバレ含)

■四月になれば彼女は

本作の主人公・藤代俊(作中名称:藤代)と、ヒロイン・伊予田春(作中名称:ハル)の出会いは大学時代。

二人の出会いは過去の4月。

舞台は東京、とある大学。

藤代は医学部の大学3年生で写真サークルに所属していた。

そのサークルに1年生のハルが入部して来て二人は出会う。

サークルの副部長である藤代は、新入生の研修?も兼ねてハルとともに渋谷に写真を取りに行った。

ハルは青森出身で、青森ではとにかく目の前にあるものを撮りまくっていた。

二人は撮りたい写真の話をしたりして時間は過ぎていった。

撮影から戻った二人は早速、部室に備えられている現像室で写真を現像にかかる。

現像を終えると、ハルの写真はまるで彼女そのもののように色素の薄い風景の写真になっていた。

不思議に思った藤代は「なぜ、色素が薄いんだろう?」とハルに聞く。

「きっと、観たい景色に近づけたいんだと思おう」とハルは答えた。

他の写真を見ていると、藤代は自分でも見たことの無いような自分の笑顔の写真に驚いた。

■五月の横顔

時間は現在の5月。

藤代は婚約者の弥生と結婚式の打ち合わせに来ていた。

藤代は医者になっていた。弥生も獣医である。

結婚式の打ち合わせでも、二人の会話は滞ることなく綺麗に繋がる。

式の予定日を来年の4月と再確認して打ち合わせは終わる。

二人は高層マンションに同棲していた。

飼い猫である、ウディ・アレンと一緒にレンタルしてきたDVDを観る。

その最中に、「元彼女」から手紙が届いたと弥生に話す藤代。

興味があるのだか、無いのだか分からないリアクションを返す弥生。

ご飯を終えて、食器を片付ける二人。

ここでも、二人は綺麗に動く。

それぞれの、寝室に向かう二人。

同棲して3年。

二人のレスは2年続いていた。

■六月の妹

大学時代の話。

電車の中で、お互いの気持ちを打ち明けて藤代とハルは付き合うようになった。

恋は風邪に似ていると藤代は思った。

知らない間に感染しているから。

二人には色々な思い出があった。

付き合い始めてから、ハルは好きだったコーヒーが飲めなくなったり、二人で好きな写真を撮って送り合ったり。

そんな中、藤代の両親の離婚が決まる。

離婚は母親から切り出したもので、夫である父親から愛情を感じなくなったことが原因らしい。

藤代はそんな父に違和感を感じなかった。

藤代も、父には「愛情」という感情が欠落していると思ったからだ。

そして、自分もそうなのかと怖くなっていた。

住んでいるアパートに戻ると、ハルが待っていてくれた。

「私はずっとそばにいるから」と強く抱きしめてくれるハルを藤代は愛おしく思った。

しかし、恋は風邪に似ている。

いつの間にか熱は下がる。

藤代とハルも例外では無かった。

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藤代は弥生と試食会に来ていた。

試食会には4人まで参加出来るということで、弥生の妹・純とその夫・松尾が同席していた。

4人は試食会をしながら、世間話。

時に、結婚4年目の妹夫婦に子どもは作らないのかと聞いたりする弥生だが経済的な事情だとか仕事が忙しいだとかで躱される。

松尾は高校で教師をしていて、純は派遣事務所で事務員とバイトを掛け持ちしているという。

後日、藤代は弥生に頼まれて相談があるという純と二人で鮨屋に来ていた。

酒を飲みながら話す二人。

酒が進んできた時、純に唐突に「お姉ちゃんとセックスしてますか?」と聞かれる藤代。

レスの事は黙っておいて、同じ質問を純に返す。

純の方は4年間レスだと言う。

二人は帰りのタクシーの中。

経済的に苦しいと言っていたはずの純、持っているバッグや身につけるアクセサリーは高級品の数々だと気付いてる藤代。

純から旦那以外の男とは寝ているし、中にはお金をくれる男もいるという事実を聞かされる藤代。

藤代は純に誘われていた。

私が誘っているだけだから、藤代は悪くないと言われて。

■七月のプラハ

7月になってハルから2通目の手紙が来た。

今度はチェコのプラハからの手紙だった。

内容は大学時代の7月、写真サークルの合宿の思い出を振り返ったものだった。

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藤代は勤務先である病院に到着する。

スーツから白衣に着替え、自分の診察室に向かうといつも先に後輩医師の奈々がいた。

彼女に自分と純を架空の人間に置き換えて話しをする。

そして、奈々に一刀両断された。

昨日の純とは、その直後に弥生から電話があり何もなく別れたらしい。

奈々と「愛」や「結婚」の価値観について話しながら診療開始時間はやってきた。

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藤代は弥生とチャペルの下見に来ていた。

弥生と結婚式というも自体について語る二人。

結婚式は流れ作業だとか、人が集まってくれるのは結婚式と葬式だけだとか。

そんな事を話しながら、藤代は視線を感じて振り向く。

そこにはイエス・キリストが変わらぬ顔で見つめているだけだった。

■八月の嘘

藤代は夢を見ていた。

純と関係を持つ夢だった。

目を覚ました藤代は汗だくだった。

スッキリするためシャワーを浴びて、髪を拭いているとメールが届く。

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藤代はタスクという男と会っていた。

タスクに先日の純の事と先ほどの夢、そしてハルから手紙が届くことをタスクに話した。

タスクはただただ面白がっていた。

結局、ここでも「愛」について語る藤代だった。

そして、酒の力を借りて本当に来ていた純からのメールを返す。

二人は今度はカフェで会うことになった。

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再び会った純からは、弥生の過去を聞く。

今でこそクールな印象の弥生だが、昔は重いタイプの女の子だったことを聞いて驚く藤代。

純に藤代は質問される。

「愛のあるセックスと、愛のないセックスはどうしたら分かると思う?」

難しい質問、外には風船を飛ばされて泣いていた子どもが変わりに新しい風船を貰って喜んでいた。

■九月の幽霊

大学時代の話。

9月になって、ハルは青森に帰ってしまったから藤代は引きこもりのような生活をしていた。

そんな事を電話でハルに話すと呆れられながら笑われ、写真の現像でもすればと言われたので藤代は写真を現像しに部室に向かった。

部室には大島がいた。
※大島:28歳のOB。結婚していて周りに愛される先輩。

その大島にハルの事が好きだと打ち明けられる藤代。

妻がいる大島に、自分の彼女が好きだと言われて混乱する藤代。

後日、突然ハルから電話がある。

「大島先輩が死んじゃう助けて!」

電話を聞いた藤代は、ハルのもとに駆け出した。

藤代が到着すると、大島はベッドの上で昏睡していた。

ハルはベッドのそばでただただ震えていた。

救急隊は押しかえけて、大島は病院に運ばれる。

なぜ、大島といるのか?何をしていたのか?大島はなぜこんな事になっているのか?

全ての疑問にハルが答えてくれることは無かった。

二人は写真部を代表して、お見舞いに行くことになった。

病院に着くと、大島の奥さんが出迎えてくれた。

そして、大島は何度もこういう事をしている。

それが、必ず幸せを感じた直後なんだと。

ハルに向かって、気にしなくていい声をかける大島の妻。

しかし、ハルと藤代が大島の病室に招かれることはなかった。

二人は病院の玄関ドアの前でタクシーを待っていた。

藤代はマンガを読みながら、ハルはドアの外の雨を眺めながら。

そこに後ろから、いきなり何か叫ぶ声が聞こえる。

病室から抜け出してきた大島が「ハルちゃん!」と何度も叫ぶながら走ってきたのだ。

ハルは大島から逃げるように雨の中を走っていく、呆然とする藤代。

藤代は必死にハルを追いかけるが、ハルを捕まえることは出来なかった。

それ以来、二人は会うことはなかった。

最後に会いたいというハルのメッセージに答えること無く、藤代は一歩的に別れた。

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藤代と弥生は相変わらずDVDを見ていた。

プログラムに恋する男。

たくさんの恋人役を演じるプログラムに嫉妬する男。

そのDVDを見て、弥生は泣いた。

なぜ、泣いているのか分からない藤代。

藤代は弥生に「全然幸せそうに見えない」と言われてしまう。

■十月の青空

全てハルの手紙です。

その中で、大島が事故死した事が知らされます。

■十一月の猿

今度は藤代と弥生の出会いの話。

藤代は強制送還されたフィリピン人が飼っていたチワワの引き取り手を探して自分も勤める大学病院の獣医科に連絡を取った。

とりあえず、一度そのチワワを連れてきてくれと言われて獣医科の病棟に赴く。

そこで出会ったのが弥生だった。

藤代はハルと別れて以来、確かな胸の高鳴りを感じていた。

しかし、その時弥生は半年後に結婚を控えていた。

それを知っていたから、藤代も恋愛関係に持ち込んだりしなかった。

話を聞いた帰り道、二人は最近観たDVDの話をしたりしていた。

二人は駅に着く。

お互いそれじゃと別れる。

後ろ髪引かれる思いの藤代に弥生から連絡が入る。

「やっぱり今から一緒にDVDを観てもいい?」

二人の週末土曜日だけの逢瀬はその日から始まった。

ただ、二人でDVDを観るだけの土曜日。

それが、弥生の結婚式の直前まで続いた。

最後の土曜日、DVDを観終わった二人は動物園に出掛ける。

動物園で豆知識を披露したりしながら、笑い合う二人。

猿山の前のベンチに二人は腰掛ける。

藤代は弥生に結婚について問いかける。

婚約者の事を愛しているのか?

幸せなのか?

どちらにも曖昧なYESで答える弥生。

そんな弥生を見て藤代も「全然幸せそうに見えない」と言う。

たくさんのリンゴを持って猿山に近づいてくる飼育員。

その飼育員からリンゴをひとつ譲ってもらう弥生。

藤代と賭けをする。

どの猿がリンゴを食べるか、弥生が当てれば藤代と会い続ける、藤代が当てればもう会わない。

そして、弥生は婚約を破棄した。

 

■十二月の子供

弥生は藤代の前から姿を消した。

まるで行き先に心残りがない藤代は、弥生の妹の純に来てもらっていた。

純も行き先は分からないが、これまで同じことは2度ありいずれもちゃんと戻ってくているので大丈夫だと純。

そして、純は松尾との子供を妊娠していた。

妊娠5ヶ月で、藤代を誘惑した夜に出来た子供らしい。

お腹に命を宿した純は、絶対に自分を愛してくれる存在を得て幸せそうな様子だった。

祝福しつつも、なんとか弥生を見つけて誤りたいと藤代は純に話す。

しかし、見透かされたように純に「何を謝るつもりなの?」「口当たりの良い事を反射神経で話してるだけじゃないの?」と言われてしまう。

藤代は弥生がいなくなる切実さ、悲しさを自分の心に確かに見つけられないでいた。

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弥生がいなくなった後も、藤代は仕事にきちんと出ていた。

今日は、診療している患者が暴れだした。

そのせいで後輩の奈々が殴れてしまう。

殴られた彼女を見舞いに来た藤代。

弥生が失踪したこと、純に子どもが出来たこと。

それら友人と置き換えて話していたが奈々には全てお見通しだった。

今に至る事態を「自業自得」と言われる。

奈々の独白が始まる。

自分がなぜ、男性と付き合えないのか。

それを初めて他人に語ることが出来た奈々は、自分の中でトラウマのようになっていた事が随分過去のことになっていることに気付けた。

藤代に感謝しつつ、颯爽と病室を後にした。

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帰り道にコンビニで色々買い物をして、ポストの郵便物を回収し部屋に戻った藤代。

その中に1通のエアメールが混じっていた。

そこには確かに”彼女”に書かれた「藤代俊様」の文字があった。

■一月のカケラ

エアメールの主は坂本弥生だった。

そこには、藤代がプロポーズした夏祭りの日。

花火を見ながら感じた幸せを短く綴られていた。

そして、それが失われたと感じている事。

それを取り戻したと思っている事。

切実な願いが込められていた。

■二月の海

藤代はとある病院の医師・中河に呼び出され海の近い病院に来ていた。

中河の病院は終末医療を行う病院だった。

そこにハルはいた。そしてハルは亡くなっていた。

それをつたえるため、ハルの残したカメラを藤代に渡すために中河は藤代を呼び出していた。

藤代はハルのカメラに残されたフィルムを現像するため母校の現像室に向かう。

現像室に来た藤城はかつて、ここにいたハルと大島がすでにこの世にいないことに心を痛める。

そして、ハルの残したフィルムを現像するとそこにはたくさんの、何枚もの海と朝日が写った写真が浮かび上がった。

かつて、二人で海外旅行し見れなかった朝日。

自分が観たいものを写すと言っていたハル。

そんなハルが死ぬ直前まで撮っていたのは、藤代と見ることがついに出来なかった朝日だった。

強烈な寂しさに涙を我慢出来なかった藤代だった。

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藤代はタスクと会っていた。

弥生の失踪を話すとタスクは笑っていた。

母親にも笑われたと、タスクを小突く藤代。

「結婚」について話すタスク。

タスクは藤代の核心を突いた。

タスクに「本気で探していない」と言われ、藤代は一気に冷静になった。

かつて、ハルを追いかけるのを諦めたように、今回もまた弥生を本気で探していない、諦めようとしていることに気付く藤代。

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部屋に戻った藤代。

弥生を求めるように彼女の寝室に久しぶりに足を踏み入れた。

彼女のベッドに横たわる。

枕元に紙の感触を感じる藤代。

そこには、ハルからの”最後の”手紙が置かれていた。

■三月の終わりに彼は

藤代はインドにいた。

ハルからの最後の手紙は病院で書かれたものだった。

ウユニ、プラハ、アイスランド、彼女は死を予感した時、行ってみたと思っていたところに行っていた。

そして最後にインドのカニャークマリ、藤代と朝日が見ることが出来なかった場所に行こうとした。

しかし、それは叶わなかった。

その手紙は藤代とハルの関係がすでに終わったものだと分かるに十分なものだった。

それを読んだ弥生がどこに行ったのか、藤代は分かっていた。

トラブルにも見舞われながらも、藤代はカニャークマリに辿り着く。

そこに弥生の姿を見つけた。

藤代は弥生に向かって駆け出していた。

過去でも未来でも無く、自分が愛する女性の元に。

3月が終わり、4月の朝日が登っていた。

「四月になれば彼女は」を読みを終えた感想

とにかく「愛」とはについて突き詰めた一冊だったと思います。

「結婚する意味」

「愛って何?」

そういう考え方に川村さんなりの考えを書いた1冊だと思います。

正直、僕は読むのに疲れる本でしたねw

それでは失礼しますm(__)m

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