【感想・ネタバレ】イノセント・デイズ 作:早見和真

少女はなぜ、死刑囚になったのか

田中幸乃、30歳。

元恋人の家に放火して妻と1歳の双子を殺めた罪で、彼女は死刑を宣言された。

凶行の背景には何があったのか。

産科医、義姉、中学時代の親友、元恋人の友人、刑務官ら彼女の人生に関わった人々の追想から浮かび上がる世論の虚妄、そしてあまりにも哀しい真実。

幼なじみの弁護士たちが再審を求めて奔走するが彼女は・・・

筆舌に尽くせぬ孤高を描き抜いた慟哭の長篇ミステリー。

以下、ネタバレ含みます。

「イノセント・デイズ」のストーリー(ネタバレ含)

■プロローグ

9月15日、田中幸乃確定死刑囚は拘置所の単独室で静かに時を待っていた。

その彼女の姿を見守るのは佐渡山瞳刑務官だった。

佐渡山は幸乃の事件をきっかけに刑務官を志していた。

幸乃の起こした「シンデレラ放火殺人事件」の概要はこうだ。

深夜1時、木造のアパートが放火される。

アパートに住む、井上さん一家のうち妻・美香と1歳の双子の姉妹が亡くなった。

生き残った夫の井上敬介は幸乃の元カレだった。

幸乃は敬介に対して事件前からストーカー行為を行っていた。

そういた背景からメディアは幸乃の過去を洗い出し、脚色し、婉曲し報道する。

学生時代の瞳の趣味は裁判の傍聴でこの事件の傍聴も抽選で引き当てることが出来た。

しかし、その裁判に大きな違和感を覚えた事が彼女の人生を大きく変えてしまった。

そして、彼女に関わったひとたちの追想が描かれる。

■第1部 事件前夜

1章 「覚悟のない十七歳の母のもと」

丹下建夫:産科医

彼は幸乃の母親ヒカルと面識があった。

未成年の彼女が幸乃を身籠って建夫が院長を勤める産科医を受診したのがきっかけだった。

建夫を中絶を臨む女性に対して決して消極的な方では無かった。

しかし、自分に孫が出来た事をきっかけに中絶させる事が出来なくなっていた。

そこに最初に会ったときよお腹を膨らませていたヒカルが再受診してくる。

その時のヒカルは真面目そうな男性と再婚が決まり、娘を愛する覚悟を秘めているように感じていた。

「シンデレラ放火殺人事件」で幸乃が母親に激しい虐待を受けていると報じられていたが、建夫はそれが正しいとは思わなかった。

2章 「養父からの激しい暴力にさらされて」

倉田陽子:幸乃の義姉

幼少期、陽子が小4、幸乃が小3の頃について語られる。

家族4人、友人の翔、慎一。

幸乃の生活は幸せなものだった。

しかし、そこにヒカルの母、幸乃の祖母の美智子が近づいてきていた。

美智子の出現に呼応するように、ヒカルや幸乃についての悪い噂が立ち始める。

そうして、まずは友人関係からほころび始めた。

そして、車の事故で母のヒカルは亡くなってしまう。

家族を繋いでいたヒカルの死が幸乃の人生を大きく変えてしまう。

ヒカルの死後、程なく現れた祖母の美智子に幸乃は引き取られていってしまう。

翔、慎一、陽子、幸乃はこれをきっかけに離れ離れになってしまった。

幸乃が祖母に連れて行かれるのを止めなかった陽子の父。

確かに一度、手を上げることがあったがメディアで報道されるような激しい虐待などは無かった。

3章 「中学時代には強盗致傷事件を」

小曽根理子:中学時代の親友

歪んだ友人関係に悩む理子。

幸乃だけが心から必要だと思える存在だった。

いじめで金銭が必要だった理子は何気なく立ち寄った古本屋で金庫の金を奪おうと一瞬考える。

しかし、その現場を店主である老婆に抑えられる。

焦る理子は老婆を突き飛ばしてしまう。

強盗と致傷、これらの事がバレたと思った理子はかつて自分に降り掛かった13歳と14歳の境界線、少年法を盾にとって幸乃に身代わりをお願いしてしまう。

そして、幸乃はそれを喜んで受け入れてしまった。

理子の考えは浅く、幸乃はそのまま少年院のような施設に送られることになる。

そんな幸乃をよそに理子は翻訳家の夢を叶えていた。

かつての友人、慎一も実は現場を目撃していたが。。。

幸乃は本当は強盗致傷事件など起こしていなかった。

4章 「罪なき過去の交際相手を」

被害者遺族:井上敬介 友人:八田聡

大人になった幸乃と交際相手、井上敬介について八田聡が語る。

一方的な被害者のように報道されている敬介だが、幸乃との交際中の彼は不誠実極まりない男だった。

金の無心、暴力など敬介の横暴は激しかった。

彼が二股の末、妻の美香が妊娠した。

別れの際、その事実を一切明かす事なく一方的に切り捨てていた。

被害者遺族、井上敬介は決して「罪なき過去の交際相手」などでは無かった。

5章 「その計画性と不快殺意を考えれば」

確定死刑囚:幸乃が語る。

彼女は全ての関わってきた人間を恨んではいなかった。

母を、義姉を、義父を。

陽子を、敬介を。

彼女が放火したアパートに住んでいた幸乃に親切にしてくれた草部も。

彼女には強烈な自己承認欲求があった。

誰かに必要とされたい。

でも、裏切られ続けた彼女。

この殺人は裏切られ続けた彼女の限界が引き起こしたものだったのか?

しかし、彼女から殺意や憎悪が感じられなかった。

■第2部 判決以後

6章 「反省の様子はほとんど見られず」

丹下建夫の孫:丹下翔、幸乃の小学生時代の友人の一人

祖父が付けてくれた自分の名前の由来通り、世界を旅していた翔は日本のニュースで幸乃が殺人を起こした事を知り、日本に帰ることにした。

司法試験をクリアし、弁護士になれる翔は帰国後すぐに父:広志の弁護士事務所に所属する。

幸乃が収監されている拘置所に面会に訪れる翔だが、幸乃に拒絶される。

諦めず手紙を出したり、事件の関係者にコンタクトを取ったりして積極的に行動する。

翔の目的は「幸乃に罪と向き合わせる事」「死刑決行を少しでも遅らせるために再審要求させる事」だった。

その点が、久しぶりに再会した幸乃のために最も動いていた佐々木慎一との違いであった。

7章 「証拠の信頼性は極めて高い」

慎一の過去の経験から、慎一は冤罪を確信していた。

慎一の目的は「幸乃の無実を明らかにすること」だった。

それを証明することが果たして、慎一に出来るのか?

そもそも本当に幸乃は無実なのか?

事件の鍵は報道や幸乃の語りでは人情溢れる存在として語られた老人だった。

全ての悪夢の始まりは公園で起きていた。。。

■エピローグ 死刑に処する

物語は再び。9月15日に戻る。

死刑執行に向かう幸乃。

慎一の行動の行方、刑務官の瞳の行動は。

願わずにいられない34ページ。

「イノセント・デイズ」を読みを終えた感想

こんなに小説の中の人物に「怒り」を覚える作品も珍しい。

こんなに祈る気持ちでページをめくる作品も珍しい。

暗い展開ではありますが、なぜかドンドン光が指しているように感じるストーリー。

作中に出てくる「相手が何を言いたいのか一生懸命考える」という事の必要性。

必要とされたい心、裏切られる心。

メディアの曲解報道に対する問題提起。

色んな要素の詰まった重厚な1冊でした。

読んで下さいと声を大きくしてオススメ出来る作品ではありませんが、きっと心に何か感じる1冊だと思います。。。

少し哀しい気持ちになりますが読んで後悔はありせんでした。。。

それでは失礼しますm(__)m

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