【感想・ネタバレ】いたいのいたいの、とんでゆけ 作:三秋縋

自分で殺した女の子に恋するなんて、どうかしている。ー

「私、死んじゃいました。どうしてくれるんですか?」

何もかもに見捨てられて一人きりになった二十二歳の秋、僕は殺人犯になってしまったーはずだった。

僕に殺された少女は、死の瞬間を”先送り”することによって十日間の猶予を得た。

彼女はその貴重な十日間を、自分の人生を台無しにした連中への復讐に捧げる決意をする。

「当然あなたにも手伝ってもらいますよ、人殺しさん」

復讐を重ねていく中で僕たちは知らず知らずのうちに、二人の出会いの裏に隠された真実に近付いていく。

以下、ネタバレ含みます。

 

「いたいのいたいの、とんでゆけ」の登場人物

■湯上瑞穂(ゆがみ みずほ)・・・大学4年生。わりとダメ人間。飲酒運転をして誤って少女を轢き殺してしまう。

■少女(名字:秋月)・・・湯上に轢き殺されてしまった少女。「先送り」の能力を持つ。

■進藤(しんどう)・・・瑞穂の友人だった男。突然自殺するが、最後に会った時の瑞穂への言葉が物語のきっかけになる。

■三枝栞(さえぐさ しおり)・・・瑞穂の隣の部屋に住む美大生、引きこもり。

■日隅霧子(ひずみ きりこ)・・・瑞穂が小学校を転校する時に声をかけてくれた女の子。以来数年間、二人は文通をしていたが。。。

「いたいのいたいの、とんでゆけ」のストーリー(ネタバレ含)

■第1章 始まりのさよなら

主人公・湯上瑞穂は小学生。転校が決まっていた。

クラスのみんなが転校する瑞穂にすでに興味を失っている中、帰ろうとする瑞穂に声をかけてくれたのが日隅霧子だった。

霧子の提案で二人は文通が始まる、思考が完全に一致するほど相性が良い二人の文通は17歳まで、続いた。

瑞穂は転校先で上手く馴染めず、以降中学や高校でも上手く馴染めていなかった。

瑞穂は文通では虚構の自分を作っていて、それが露見するのを恐れた瑞穂は手紙を無視し続ける事にしてしまった。

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瑞穂は大学4年生になって、友人の進藤の死をきっかけに日隅霧子にもう一度手紙を出す。

手紙には待ち合わせの場所と日時、謝罪の言葉を綴った。

10月26日に公園での再会を瑞穂は願っていた。

■第2章 ありきたりな悲劇

しかし、霧子が現れる事は無かった。

勝手な期待である事は分かっていた瑞穂だが、霧子に会えなかった事を心から失望した。

自棄になって飲酒運転してしまう瑞穂は制服を着た女の子を轢き殺してしまった。

はずだったが、なぜか少女は無傷で車にも事故の形跡が無かった。

その少女には<先送り>の能力があり、瑞穂の起こした事故が<先送り>にされた。

それでも少女の人生を終わらせてしまった事には変わりなく、罪悪感は瑞穂からは消えず、彼女に何でも協力したいと思って連絡先を渡そうとする。

連絡先を書いた紙をビリビリに破られる事を8度繰り返してようやく連絡先を受け取って貰えた。

★先送り能力について★

・自分に起こった出来事をなかったことに出来る。その出来事で受けたキズなどは消える。

・あくまで「先送り」にしただけで時間が経てばキズは具現化する。

・「なかったことにした」記憶も残る。

・「なかったにした」こともなかったことに出来る。

・先送りにする時間は願いが強いほど期間が短い。

・先送り中に起こった出来事は、少女が死んでしまえば無いことになる。タイム・パラドックス。

■第3章 点数稼ぎ

飲酒運転をして少女を轢き殺してしまった翌日にはまた酒を飲んでしまうクズっぷり。

隣の部屋の美大生の女と無意味な話をしていると、少女から迎えに来いと電話がかかってくる。

少女は家に帰れないと言うが、理由は父親をハンマーでボコボコにしてきたからだと言う。

自分の死を予約されている少女の復讐が始まる。

■第4章 腰抜けの殺人鬼

父を続く、次の復讐相手は姉だった。

少女は持っていた洋裁鋏で姉を一突きで殺してしまう。

「人の死」という非日常で異常な光景にも瑞穂はなぜか冷めていて、そのことを実感出来ていることを瑞穂自身驚くほど冷静に受け止めていた。

これまで強気な発言と態度をとっていた少女だったが、殺人を犯して腰を抜かしてしまうなど人間らしい面も見え隠れいていた。

腰を抜かした少女を車に運び、その場を後にする瑞穂だった。

■第5章 少女と洋裁鋏

次なる復讐相手は高校の同級生・藍原。

見た目は普通の元気そうな女の子だが、安定のクズカス女。

またしても洋裁鋏で色々刺されて殺される。

瑞穂の提案で死体があるアミューズメント施設でボウリングをする二人のファンキーっぷり。

そのまま次の復讐へ向かおうとする二人だが、心も体も疲労していた二人はビジネスホテルに宿泊することにする。

ホテルで瑞穂は少女の凶器である洋裁鋏に興味を抱き、少女に言って洋裁鋏を手に取った。

洋裁鋏を持つと、瑞穂は自分の中の殺意を感じる。

少女を殺したい、そう思っているところに眉間に強烈な衝撃を受ける。

少女に灰皿で眉間を強打されていた。

少女に謝罪し、洋裁鋏を彼女に返した。

■第6章 いたいのいたいの、とんでゆけ

次の復讐相手は中学時代の同級生。今度は男で不良。

そこで少女の名字が「秋月」だと分かるが、彼女が嫌がるのでその名で呼ぶことは一度しかない。

男は最初、反省した様子だったが二人が油断したすきに反撃に転ずる。

男によって大きな怪我をおった瑞穂は心のリミッターが解除され強い破壊衝動にとらわれる。

何度も何度も殴った後、最終的に少女が男にとどめを刺す。

キズだらけ、流血だらけの二人、車の鍵も壊れてしまったが、運良く街はハロウィンパーティの行列だった。

パーティに紛れ、古着屋で服を買い、近くの学校に忍び込み、体や顔を洗う。

少女は血液が凝固した髪を洋裁鋏でバッサリ切る、電車を使って二人はアパートの部屋に戻った。

アパートに戻った少女は弱っていて、慰めを欲していた。

魔法の言葉など無いと思った瑞穂。

瑞穂が少女にかけた気休めの魔法の言葉は「いたいのいたいの、とんでゆけ」だった。

少女が求める度、生真面目に、切実に何度も気休めの魔法の言葉を繰り返した。

右手に深刻なキズをおった瑞穂にも、少女は「いたいのいたいの、とんでゆけ」と気休めの魔法の言葉をかけた。

■第7章 賢い選択

翌日、瑞穂は熱を出してしまう。

瑞穂を寝かせて少女は買い物に出かける。入れ替わりに美大生が部屋を訪れる。

帰ってきた少女を見て、美大生は髪を切ってあげると言う。少女は素直に従った。

誰もいなかった部屋で、瑞穂は手紙を書いた。文通が終わってからも出すあてもない手紙を彼はたまに書いた。

髪を綺麗に切った少女が帰ってくる。

少女は復讐の無意味さを感じていた。

瑞穂は少女に言われて、一人で街を歩き回っていた。

一人でいる時間で、瑞穂は自分の人生について考えたりしてしまう。

瑞穂は少女がかつてピアノを弾いていたこと知ってか、突然ピアノを買って部屋に戻った。

怪我のせいで左手が上手く使えない少女を補うように、瑞穂は利き腕の左手でピアノを演奏する。

お互いが補い合うようにピアノを連弾する二人。

夜、瑞穂は少女に恋している事を認めると少女にその思いを告げる。

その告白は随分イカれたものだったが、少女はその告白で復讐を続ける事にした。

二人は早速、復讐に繰り出した。。。

■第8章 彼女の復讐

結局、少女は全員で17人を殺害した。

これまで無欲だった瑞穂のたったひとつの欲求が「復讐をする彼女を見る」ことだった。

そして、少女の最後の復讐は瑞穂を殺すこと。

最後の日を過ごす二人。ここまでの時間で自分たちが色々な事を知ったことに思いを馳せる。

服を買う楽しさ、髪を切ってもらう楽しさ、娯楽施設で遊ぶ楽しさ、お酒を飲む楽しさ、ピアノを連弾する楽しさ。

少女は瑞穂を殺すことなく、彼に口づけをして姿を消す。

瑞穂は少女が自分を殺してくれなかったので自殺しようとするが、美大生がタイミング良く来て未遂で済む。

ここで美大生の名前が「三枝栞」であること、自殺した進藤との浅からぬ関係など明かされる。

三枝栞をきっかけに、瑞穂の記憶が巻き戻りを始める。

■第9章 そこに愛がありますよに

<彼女>の過去と真実。

「彼と思考が完全に一致する」彼女の目を背けたくなる過去の出来事が全て開示されう。

過去の出来事を知って訪れる違和感の原因も分かります。

■第10章 おやすみなさい

辛い人生を歩んできた二人。

「あれ」は確かにあった事を知って、安らかな終わりを迎えた。

「いたいのいたいの、とんでゆけ」を読みを終えた感想

殺人の描写や、過去の壮絶なイジメの描写など非常に陰湿で悲惨でテンションが底抜けの落とし穴に落ちます。

読むのをやめればいいと思いますが、目をそらすのは主人公の二人を考えると出来ないとも思います。

物語の是非は作者である三秋縋のあとがきを読むと考えがちょっと変わるかもしれませんね。

こういう物語を読む度に、偽善者のようですが子供も、大人も安心して眠れるような毎日であって欲しいと思ってしまいます。

だけど、現実にはそうでない事も多いということを思い返すためにもこうした作品はあってもいいのではと思います。

それでは失礼しますm(__)m

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