【感想・ネタバレ】そして、君のいない九月がくる 作:天沢夏月

隠された想いを巡る青春ミステリー

その夏、恵太が死んだ。

恵太といつも一緒にいた美穂、大輝、舜、莉乃たちは、そのショックから立ち直れないまま呆然とした夏休みを送っていた。

そんなある日、美浦の前に現れたのは、死んだ恵太に瓜二つの少年、ケイ。

「君たちに頼みがある。僕が死んだ場所まで来てほしい」

戸惑いながらも、美浦たちは恵太の足跡を辿る旅に出る。

旅の中でそれぞれが吐き出す恵太への嘘、嫉妬、後悔、恋心。

そして旅の終わりに待つ、意外な結末とは。

以下、ネタバレ含みます。

「そして、君のいない九月がくる」の登場人物

■結城 恵太(ゆうき けいた)・・・夏休み前に行方不明になり、事故死。グループの中心人物だった。陸上部で全国クラスの実力を持つ。

■花野 美穂(はなの みほ)・・・恵太と幼なじみで一番付き合いが長い。陸上部所属。恵太が好きだった。

■槙本 舜(えのもと しゅん)・・・恵太、美穂と同じく陸上部。恵太と同じく短距離の選手。

■横山 大輝(よこやま たいき)・・・バレー部。恵太とは高校から友達になったので付き合いは浅いが仲が良かった。

■西園 莉乃(にしぞの りの)・・・恵太と美穂とは中学からの付き合い。唯一運動部に所属していない。クールでドライな性格。

■ケイ・・・4人の前に現れた恵太のドッペルゲンガー。生前の恵太の記憶を断片的に持っている。4人を恵太が死んだ場所に導こうとする。

「そして、君のいない九月がくる」のストーリー(ネタバレ含)

■第1部 ドッペルゲンガー

1、世界五分前説

7月16日(木)、夏休みの5日前に結城恵太は行方不明となった。

そして、7月19日(日)に烏蝶山で死体となって発見された。

恵太の友人である4人、美穂、莉乃、大輝、舜は葬式で冷たく冷え切った友人と再会してしまう。

本作のヒロインは美穂。

恵太とは幼少時からの幼なじみであり、同じ陸上部、そして恵太に恋心を抱いていた。

7月23日(木)

葬式が終わって数日、美穂は未だに突然恵太がこの世からいなくなってしまったことに呆然としていた。

そんな時、「みほ」と呼ぶ声が聞こえる。

誰かと思い外を見ても誰もいない。

しかし、自分を呼ぶその声は美穂のよく知る声に聞こえた。

美穂は思い切ってドアを開けるとそこには、恵太が立っていた。

2、ケイ

ドアを開けて立っていたのは恵太にしか見えない少年だった。

しかし、恵太は死んでいる。

美穂が動揺する中、恵太そっくりの少年は自らを”ケイ”と名乗り、恵太のドッペルゲンガーだと話す。

信じられないと思った美穂はケイの体に触れようとするも触れられない。

突然の出来事に美穂は気を失ってしまう。

意識を取り戻すと、自宅の和室だった。

やはり夢かと思った美穂だが、側にはケイがいた。

気を失った美穂を助けてくれたのは莉乃だった。

ケイは二人に恵太の最後の願いを叶えて欲しいとお願いする。

しかし、ケイへの不信感が強い莉乃と口論になってしまう。

明くる日の、7月24日。

美穂はケイのいう、恵太の最後の願いを叶えるために恵太の死んだ場所に向かう決意をする。

さらに明くる日、7月25日の朝。

結局、4人全員で烏蝶山に向かうことになった。

電車やバスで向かおうとするが、ケイはそれらに乗れない。

さらに恵太の向かった場所が詳細に分かるのはケイしかいないため烏蝶山まで徒歩で行くことになった。

奇しくも、恵太も烏蝶山まで徒歩で行ったらしく、4人とケイも恵太の足跡を辿りながら烏蝶山へ向かう。

■第2部 スターゲイザー

第2部では恵太の足跡を辿りながら、4人の恵太に関する隠されていたエピソードを開示しながら目的地の烏蝶山へ向かっていきます。

1、槙本 舜

舜の恵太への感情が明かされる。

烏蝶山までの道中、初日の夜は漫画喫茶に泊まる事になった。

恵太もそうしたからだ。

漫画喫茶の店員さんも恵太と恵太と一緒に来たらしい女の子の事を覚えていた。

漫画喫茶では大輝に、恵太との仲を追求される。

舜と恵太は実は少し微妙な関係だったようだ。

なぜ、そうなったのか。

隠されていた恵太への感情は「嫉妬」だった。

2、横山 大輝

大輝の嘘が明かされる。

美穂が恵太を好きなように、大輝は美穂が好きだった。

大輝は美穂が恵太を好きなこと、恵太も美穂が好きなことが分かっていた。

大輝はそんな二人がくっついてしまうのが嫌だった。

大輝の嘘は些細なものだった。

だけど、もしあの時、嘘をつかなければという思いが大輝を苦しめていた。

しかし、その嘘も実は大輝にも美穂にも莉乃にもバレていた。

3、西園 莉乃

莉乃の隠していたものは後悔、罪悪感。

莉乃は恵太の家庭的な事情から来る自殺願望を唯一以前から知っていた。

恵太の自殺願望を知ったのはほんとに偶然でしかなかった。

莉乃以外の3人が、恵太の自殺など信じられないと思う中、莉乃は一人だけずっと違う考えをもっていたのだ。

恵太はもしかして自殺だったのかもしれない、自殺願望があることを知っていながら何も出来なかった。

その思いが莉乃を苦しめていた。

そんな苦しみを抱えながらも、莉乃は途中で投げ出したりせず恵太の死んだ場所を目指す。

そして目的地も近づく中、莉乃は恐ろしい事に気付いてしまう。

4、花野 美穂

美穂が語るのは、恵太が行方不明になっている期間の物語。

なぜ、美穂はそれを知っているのか。

4人は目的地に到着する。

恵太の最後の願いは達成される。

■エピローグ スタンド・バイ・ミー

恵太の”本当”の最後の願いを美穂に伝えるケイ。

そして、ケイは消えた。

明日から2学期。

恵太のいない9月が始まろうとしていた。

4人は20歳になった。

成人式を終えて4人は恵太の墓参りをする。

そこには中身が半分減った缶ビールと花が添えられていた。

恵太の父親が供えたものだった。

「そして、君のいない九月がくる」を読みを終えた感想

一夏の旅がテーマな作品。

洋画「スタンド・バイ・ミー」のように4人は恵太の死んだ場所に歩いて向かう。

ちなみに、スタンド・バイ・ミーは日本語で「そばにいて」的な意味を持っているらしい。

4人は旅の中で自分の隠していたものをさらけ出し、そして救われる。

恵太の旅も、決して寂しい旅ではなかった。

莉乃が陸上部のジャージを貸してもらって着ていたのだが、その秘密に気付いた時のホラー感が一番印象的でした。

哀愁漂う読了感。

夏の終わりにオススメしたい1冊でした。

それでは失礼しますm(__)m

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